LOST ANGEL

「うち、大学行けるだけのお金なかったから、就職して頑張って、いつかは人の役に立てる仕事に就きたいって…そんな夢もあったんだ」

笑顔でそう話す相原だったが、どこか無理しているように感じられた。

「でも、いざ就職すると色々あってさ…。嫌な先輩とかセクハラの上司とかムカつくことばかり」

「そっか…」

「最初のうちは頑張ってたけど、コピーとかお茶汲みとか営業スマイルばっかしてる間に、もうどうでもいいやって思うようになっちゃった訳よ」

吐き出すように喋り続ける相原。

「嫌味もセクハラも別に気にならなくなった。どうでもよくなったの、金さえ貰えれば、生活出来れば。夢なんか馬鹿らしくなった。酒や男の方が楽しくなったし」

「…大変なんだな」

それしか言えなかった。

「だから汚したくなる…」

「ん?」


ドスッ…

それは一瞬の出来事だった。

相原の腕がオレをベッドに押し倒した。

「キレイなものしか見てない目だね」

「あっ…相原?」

甘い香りに頭が真っ白になる。

「現実を教えてあげる」

「…えっ?」

相原の唇が迫ってきた。

早くなる鼓動。

長い髪が頬に触れてくすぐった
い。

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