LOST ANGEL
「簡単なことだよ」
いつもチャラついている兄貴の声のトーンが変わった。
「相手の幸せを願うこと…それが愛…」
「幸せ?」
「例え自分が不幸になっても、相手と結ばれることがなくても、相手を幸せにしたいと思うこと」
それが愛…
オレはそんな簡単なことも解らずにいたのか…
だから過ちを犯したんだ…
彼女を離したくなかったから…
「愛って、恋と違って色々種類があるだろ」
「人間愛?」
「もっと簡単に考えろよ、周り見れば解るだろ」
兄貴は引き出しからアルバムを持ってきた。
ページをめくると、そこには家族4人の笑顔。
「家族愛?」
「そう。親は子供の為なら死んでもいいって思うんだって。オレにはまだ解らないけどね」
「そうなんだ…」
「友達でも動物でも生き物じゃなくても、全てのものに愛は感じるものだからな」
兄貴がこんなに深く考えていたことが何より驚いた。
「で、フォールインラッブの相手は例の由紀ちゃんか?」
「はっ?」
「久々に会って舞い上がったのかな〜と思って」
「違うよ…」
「なら良かった」
「ん?」
「あっ、ああ…あの娘はお前には合わないかなっと…ハハ…」
兄貴が言葉を濁らせたのが少し気になったが、この時はあまり気にならなかった。