LOST ANGEL
「まさか、兄貴が相原に惚れたとか?」
「ないない」
兄貴は本当に興味がない表情で手を振った。
「兄貴はいないの?」
「なに?」
「幸せにしたい相手」
オレは意地悪い顔をする。
だいぶ長く一緒に住んでいるが、兄貴の真面目な恋愛事情について詳しく聞いたことはなかった。
「…そういう相手の出会うって奇跡の確率だろ。今のオレにはないな」
奇跡の確率か…。
「出会いって、突然やってくるもので、求めるものじゃないから」
そう付け足す兄貴。
「突然…か」
「気付かなかったことに突然気付いたり、手遅れだったり…人生って難しいよな」
そう言って兄貴は再びタバコをくわえてベランダに出ていった。
オレは杏奈の言っていたことを思い出す。
兄貴が昔からチャラかったか?という、あの質問。
こんな歳になるまで一緒に過ごしてきたのに、兄貴の本当の姿を今になって初めて見たような気がした。
杏奈に出会わなかったら、きっとずっと気付かずにいたのかもしれない。
奇跡の確率。
オレが杏奈と出会ったのは奇跡なのか?
霊能者でもないのに、幽霊である杏奈をハッキリ見えるのは何故
だ?
奇跡なのか?