LOST ANGEL
ビックリした…。
そういうこと言うから、そういう目でみちゃうじゃないか…。
男ってバカだ。
いや、オレだけか?
「つーか、はたからみたらオレひとりじゃん…」
「あっ、ホントだ!」
「淋しい人みたいに思われる…」
杏奈はスゴく幸せそうに笑った。
罪な笑顔。
杏奈が笑っていると、時々不安になる。
そのまま消えてしまいそうで…。
そして運命の日がくる。
「遠出して大丈夫?」
不安げな顔をする杏奈。
「大丈夫だよ。あれ以来頭痛もないし、薬も持ってるし」
電車の乗客が変な目でオレを見ている。
見て見ぬフリをしている人がいることも分かる。
だって、今オレは誰も座っていないシートに向かって話し掛けているのだから。
気味悪がって席を移動する人もいた。
でも、いいんだ。
そんなこと気にしない。
携帯で話すフリもしない。
オレは確かに杏奈と会話しているのだから。
「駅でお水買った方がいいね。花火始まったら動きづらそうだし」
「そうだな」
「…浴衣の人、多いね」
目的地に向かうにつれて、花火大会へ行くであろう人々が増えてきた。
「わたしも着替えられたら良かったな」
女の子らしいつぶやきだ。