ねがいごと。
ソレを羨んだ事なんて、一度もない。


憧れた事もない。



ただ、マキの欲しいものは必ず手に入れるとゆう信念の強さには驚かされた。




学生時代に付き合っていた先輩もそう、学生には似合わないブランド物もそう、細い手足も、手入れされたフワフワの髪の毛も。





『努力もしないで僻むばかりのヤツが大嫌い。ね、ゆうちゃんもそう思わない?』





『アタシもそうかもよ。』






マスカラを塗り直しながら、マキは一瞬アタシを見て微笑んだ。







『ゆうちゃんは違うよ。やっかんだり、僻んだりしない。』







『どうかな?』





適当に相槌を打ったつもりだった。







『だって、興味がないもの。人に。だから誰とでも距離感とって、上手に溶け込んでるフリしてる。』






内心、ドキッとした。






『腹のなかでさ、ぜーんぶ、くだらないって思ってんでしょ?アタシの事も。』






なにも言えないアタシに、マキは続けた。






『アタシは誰にどう思われようが、関係ないの。欲しいから手に入れたい、ただそれだけ。ゆうちゃんもそうやって生きてみたら?』





『マキみたいにはなれないよ。』






『皆の顔色伺って生きてくより、よっぽど簡単だよ。顔色伺ったとこで、誰も何も与えてくれないし。じゃぁね。』






ソレはきっと正論だった。







嫌な記憶力として浮かぶあの日の様に、アタシはスカートの裾を握りしめた。




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