星の奇跡

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次の日あつしはテントの暑苦しい感覚にうなされ目を覚めると、背中の辺りが痛く、地面の辺りをさそってみると、大きな石が背中の辺りにあり、ちょうど寝返りをうった時に下になっていたようでした。

蒸しかえるような暑さの中、康平は汗をかきながらも熟睡しており、あつしは起こさないようにそっとテントの外へ出ました。

外は強い日差しが照りつけているものの海からの心地よい風が寝苦しかったもやもやを吹き飛ばし、一気にすがすがしい気持ちと同時に爽快感を与えました。

「こんなところへ住めたら最高だろうな」あつしは独りつぶやき、一段下のコンクリートへ降り、タバコに火をつけじっと遠くを見つめていました。

ちょうど別れたばかりの彼女の事が頭の中を過ぎり、ここにも一緒に来れたらよかったなと思い浮かべていました。

高校3年生の秋、文化祭の準備に追われている頃、違うクラスでいつも外ばかりを見ている早苗を見かけました。

大人しそうですこしふっくらした彼女は目立たないタイプで頭もよく優等生タイプの女の子でした。

いつも大人数であまりガラの良くない連中といたあつしとは正反対くらいの存在で、今まですれ違っていたのかもしれないが、気にも留めていなかったため、気付きもしていなかったのでした。

あつしは、何故か早苗の横顔に見とれ、毎日早苗のいるクラスの前を通るのが楽しみで、少しでもこっちを見てくれるように願いながら何度も行き来したりして自分の存在に気付いてもらおうとしていました。

ある日の放課後、くじで当番になってしまった文化祭委員のあつしは早苗のクラスの出し物の件で行くと、もうすでにクラスには誰もおらず、帰ろうとすると早苗が戻ってきました。
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