いつか、眠りにつく日
「もう大丈夫」
身体を離すと、元気良く力こぶを作るマネをした。

 もう寒くないし、息も白くない。

「あ」
クロが声を上げて上を見た。
「雨だ」

 ぽつぽつと雨が空から落ちてきていた。

 額に当たる雨粒が心地よい。

「物をすり抜ける要領。雨をすり抜ける、って思え。そうすれば濡れずにすむ」

「いい、平気。気持ちいいよ」

___まるで生きているみたい

 そうつい思ってしまい、私の霊生活もサマになってきたのだと苦笑する。


「さっきまで震えてたくせに」
そう言うと、クロも安堵したように少し笑った。




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