いつか、眠りにつく日
 雨はどんどん強くなり、すごい音をたててアスファルトを叩きつけだした。

 さすがに私も雨をすり抜けさせて歩くことにした。すり抜けた雨が足元で跳ねて踊っている。

 ようやく雨の向こうにバス停が見えてくる。

 そこには先客がいるようだった。5歳くらいの男の子と、スーツを着た父親が雨の向こうに見えた。

 さっきから男の子は雨音にも負けないくらいの声で泣き叫んでいる。

 金切り声で、父親の手から逃げようと暴れているようだった。

「なんだ、あれ。うるさいな」
クロがしかめっつらをする。

「どうしたんだろうね」

 男の子は声の限りを使って叫び続けているようだった。

「おい、落ち着けよ」
父親らしき男がオロオロと言っているが聞く耳をもたない。

 その時だった。

 父親の手からついに逃れた男の子がこちらに向かって走ってきたのだ。



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