いつか、眠りにつく日
 あっという間に全身がずぶ濡れになるのもかまわず、一心不乱に駆けてきたかと思うと私たちの少し手前で派手にすっころんだ。

 水しぶきがこちらまではねてきた。

「おい、落ち着けって」
男が追いかけてきて男の子を立たせた。

 男の子がハッとした顔をしてこちらを見る。

___え?

 一瞬目が合ったような気がして私は歩みを止めた。

 すると男の子は、
「助けて!お姉ちゃん!」
と、私の腰に抱きついてきたのだ。


 その場にいた男の子以外が目を丸くして互いの顔を見合わせた。

「なんだ、案内人かよ」
真っ先に口を開いたのはクロだった。

「え!?もしかしてあなたも!?」
父親だと思い込んでいた男がそう言い、心底ほっとしたような顔になった。

「じゃあ、この子も・・・?」
私は自分のおなかのあたりに顔をうずめている男の子を見て男に尋ねた。



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