いつか、眠りにつく日
 自分が死んだのは理解できた。

 母の悲しみも十分に伝わった。

 でも、その悲しんだ人にさらに不幸をもたらすのは嫌だ。

 私の気持ちを読んだのか男は、
「さ、そういうことだから。1ヶ月も寝ていたんだから、あまり時間がない。さっさと出かけるぞ」
と玄関に向かって歩き出した。

「1ヶ月も?」

「さっき言っただろうが。ねぼすけにもほどがある」

「どこに行くの?」

「それは外に出てから説明する。まずはこの家を離れるんだ」
あごで『こっちに来い』と合図してる。

 立ち上がって母をもう一度見た。

 洗い物が終わったのか、今度はお茶をいれている。


「お母さん、ありがとう。ちょっと行ってきます」

 またこみあげてくる涙と戦いながら、私は男の開けたドアから廊下へと出た。








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