ビロードの口づけ
 相変わらずしなやかな身のこなしに見とれてしまう。
 その隙にジンは窓を閉めカーテンを引いた。
 部屋の中は再び暗闇に支配される。

 夜目の利くジンは平然と部屋の中を移動していた。
 気配は感じるもののクルミにははっきりと見えない。

 とりあえず灯りをつけようとベッドの方へ足を向けた時、小さな灯りが点った。

 枕元にある灯りがついている。
 その横でジンがベッドの縁に腰掛けていた。
 クルミがつけようと思っていた灯りを彼がつけたようだ。


「話があるんだろう? あんたも座ったらどうだ?」


 からかうような笑みを浮かべて、ジンは自分の隣をポンポン叩く。

 ジンの手が届く範囲に座ったら、話を聞くどころではないような気がする。
 少しの間ためらった後、クルミはジンから距離を置いてベッドに腰掛けた。
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