ビロードの口づけ
 やがて時間が来て、別の侍女が家庭教師の訪問を告げた。
 クルミはモモカと別れ、ジンと共に部屋に戻る。
 すぐにやって来た教師と入れ替わりに、ジンは部屋を出て行った。

 学習の時間が終わり、モモカと一緒に教師を見送った。
 すぐにモモカがジンを迎えに行く。
 今度は素直にまかせた。
 何度も彼女を心配させるのは申し訳ない。

 覚悟を決めてジンと一緒に部屋に戻る。
 どんな報復が待っているかと身構えていたら、意外にもジンは部屋の隅に黙ってたたずんだ。

 何もないならそれに越したことはないが、身構えていた分拍子抜けする。

 クルミはジンの様子を窺いながら、そろそろと壁際のソファに移動して腰掛けた。

 読みかけの本を手に取りページを開く。
 本に視線を落としたが、やはり気になってチラチラとジンを窺ってしまう。

 そんなクルミの様子を不審に思ったのか、何度目かに目が合った時、ジンが声をかけてきた。


「何か用か?」

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