ビロードの口づけ
 ジンの言葉に、全身が一気に熱くなった。
 この未知の感覚が、不快でないどころか快感である事を改めて思い知らされる。

 嫌われているのに触られて喜んでいる自分のみだらな身体が恥ずかしい。
 ジンはそんな恥ずかしいクルミを見て楽しんでいるのだ。

 恥ずかしいのに、波のように押し寄せる快感が、クルミの理性をはぎ取り思考を奪っていく。

 ひときわ大きな波に飲み込まれ、目を閉じているのに目の前が真っ白になった。

 全身から力が抜け、ふと押さえつけていたジンの身体が少し浮いている事に気付く。
 重いまぶたを開くと、ジンが目の前で意地悪な笑みを浮かべた。

 クルミに見せつけるように、濡れた指先をゆっくりとしゃぶる。


「イッた時のあんたって、最高に甘い香りを放つんだな。蜜の味も最高だ」


 意味はよく分からないが、とんでもなく恥ずかしい事を言われているような気がする。

 ジンが一層凶悪な笑みを浮かべた。

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