オレンジ・ドロップ

 学校を出て、裏路地を並んで歩く


 「カッパちゃん鯛焼き好き?」


 「はい」


 「こんなので悪いけど、奢ってあげるから♪」


 「いえ……そんな、いいですよ」


 「嫌いなの?」


 「嫌いじゃないです」


 「じゃ、決まり……ね☆」


 「すみません」


 「何で謝るの? こっちが好意を持って奢ってあげるって言ってるんだよ? そういう時は“ありがとう”でしょ?“すみません”とかは悪い事をしたときに言う言葉だよ」


 「すみませ……」


 「ほら、また。今度言ったらもう買ってあげないよ?」


 「す……」

 一瞬ミカオ先輩の睨み顔

 私も言葉を飲み込んで


 「ありがとうございます」

 言い直した


 「よろしい。それじゃ、カッパちゃん16歳おめでとう」


 「ありがとうございます」

 ミカオ先輩からささやかなプレゼント

 祝ってくれる気持ちが嬉しかった

 そして

 私は、この日“ありがとう”の言葉の大切さを学んだ気がする

 きっと、この日ミカオ先輩と一緒に過ごさなければ、こんな大切な事を見過ごしたままっだったかもしれない




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