記憶 ―砂漠の花―
「はぁ~い、アイリ!久しぶり!会いたかったよっ。」
「……!?」
奴は、そう言いながら私に抱きついてきた。
力のこもった両腕に私はぎゅっと覆われ、さらに額に口づけまでされた。
「アラン…相変わらず…」
「相変わらずカッコイイ?」
そう首を傾げて聞くアランの頬を引っ張り、私は言い放つ。
「女ったらしねっ!」
「アイリも相変わらず俺に素っ気ないよね。いいじゃん、仮にも従兄弟なんだし仲良くしようよ…」
アランはまだ私を拘束したまま、懲りずに顔を近づけてきた。
「あんたの言う『仲良く』は意味が違うのよっ!!」
私は手のひらで力一杯、アランの唇を拒否する。
女ったらしのアラン王子。
シオン国王の一人息子。
アランの言う通り、仮にも従兄弟にあたる。
全くの変わり者で、派手好き。
カッコイイから…とウィッチの真似をして髪を黒く染め、女の子に騒がれる事を生き甲斐としている生物だ。
あの叔父様から、なぜ?
遺伝子の不思議。