記憶 ―砂漠の花―


「はぁ~い、アイリ!久しぶり!会いたかったよっ。」

「……!?」

奴は、そう言いながら私に抱きついてきた。

力のこもった両腕に私はぎゅっと覆われ、さらに額に口づけまでされた。


「アラン…相変わらず…」

「相変わらずカッコイイ?」

そう首を傾げて聞くアランの頬を引っ張り、私は言い放つ。


「女ったらしねっ!」

「アイリも相変わらず俺に素っ気ないよね。いいじゃん、仮にも従兄弟なんだし仲良くしようよ…」

アランはまだ私を拘束したまま、懲りずに顔を近づけてきた。


「あんたの言う『仲良く』は意味が違うのよっ!!」

私は手のひらで力一杯、アランの唇を拒否する。


女ったらしのアラン王子。

シオン国王の一人息子。
アランの言う通り、仮にも従兄弟にあたる。

全くの変わり者で、派手好き。
カッコイイから…とウィッチの真似をして髪を黒く染め、女の子に騒がれる事を生き甲斐としている生物だ。

あの叔父様から、なぜ?
遺伝子の不思議。

< 59 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop