記憶 ―砂漠の花―
アズはここぞとばかりに、内に秘めていた思いを打ち明けた。
「アイツがいるから、妹扱いしなきゃならないだろ!?父上にアイリも行くって聞いた時は、嬉しい反面、悩んだよ!?だけど、押さえるの限界だったし、打ち明けちゃえ、と思って。もっと楽しい旅になることを期待していたのに…」
一人でぶつぶつ言いながら大きな溜め息をついた。
私は、そんな普段と違うアズが嬉しくて、内容もろくに考えずに感じた事を声に出す。
無意識のうちに。
「アズ、ヤキモチやいてんだ~。こんなアズ初めて見た~。」
「そりゃあ、今までは頑張って優しいお兄ちゃん演じてましたから!今さら優しいお兄ちゃん演じてても気まずいだけなんじゃないかと昨晩考えまして、アイリの前では開き直ろうと……」
ふと言葉の途中でアズが荷物から顔を上げ、私を見る。
「アイリ、笑ってるね…。笑顔だね。」
「……?うん。」
「旅の初日に言った事覚えてる?全部忘れてって。」
…あれだ。
『困らせるつもりはないんだ』
「あれ、取り消して?その時は本当に困ってそうだったんだけど。その後しばらく気まずかったし。」