Raindrop
……ああ。

僕が水琴さんを何故心配しているのか。それをちゃんと解っているのか。

その上で、あの教会での出来事など忘れて、自分のことだけに集中しろと、そう言っているのだ。

子どもを諭すみたいに、優しく頭を撫でて。

「……」

僕は……そんなに“コドモ”なのだろうか。


なんだろう。

なんだか、胸の奥がモヤモヤとしていて落ち着かない。たぶん、子ども扱いされることに慣れていないから……だと思う。

優しく撫でられた頭に手をやり、軽く息をついたところで……レッスン室の入り口に立ってぽかんとした顔をしている拓斗と目が合った。

無言でしばらく見つめ合った後。

拓斗はかあぁと顔を赤くして、ぶんぶんと首を横に振った。



僕は何も見てないよ。見てないから、安心して、兄さん。



拓斗の顔にはそう書いてあった。


……また何か誤解を生んだようだ。


< 153 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop