Raindrop
「……ねぇ、響也」

「なんだよ」

マスターがサービスで出してくれているオレンジジュースのグラスを、ぐいっと傾ける響也。

「大学生から見た中学生って、どれくらい子どもなんだろうね」

「はぁ?」

静かな歌の中に素っ頓狂に響いた響也の声に、客の何人かが振り返って「しーっ」と人差し指を口に当てた。

それにぺこりと頭を下げてから、響也は僕に向き直る。

「さぁな? ……俺らが大学生をどのくらい大人に見てるか、の逆くらいじゃね?」

「……そうだろうね」

無意識のうちに手にする、オレンジジュースの入った冷たいグラス。

結露して、つ、と流れていく水滴が指先を濡らす。

──少なくとも。

大学生──とりわけ成人を迎えている水琴さんは、このグラスの中身がお酒でも許されるわけだ。

法律上許されない僕たちからすれば、それは分かりやすいボーダーライン。

興味はあるけれど、手を伸ばすことは許されない。そういうモノ。

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