Raindrop
この人たちの存在が、貴女をそんな風にしているんですか。

そんな心の内からの疑問に、彼女が答えるはずもない。

ただ一粒の涙が、閉じられた瞳からすっと通った鼻梁へと流れだし、ベッドのシーツの上にぱたりと落ちた。


──狡い。

その涙は、狡い。


別の誰かを想う貴女の手を、振り解けなくなる。





夜空を渡るまばゆい月は、いつの間にか雲の中。

西に傾いていくのを見届けないまま、しとしとと雨が降りだす。

雨音は彼女の涙を隠そうと、静かなショパンの調べを響かせた。




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