Raindrop
……知らない名前だけれど、知っていた。
このポストカードの差出人は、あの教会で幸せに微笑んでいた2人。きっとあの結婚式の数日後に新婚旅行に旅立って、そこから送られてきたのだ。
彼女に何があったのかなんて。
あの幸せそうな2人とはどんな関係かなんて、知らなくてもいいことなのだけれど。
でも……。
ポストカードの消印が8月15日だということと、真ん中に破り損ねたような切れ目を見つけてしまっては、気づかざるを得ない。
8月15日……コンクール本選の約一週間前だ。
エアメールなら一週間ほどで届く。
つまり、これを受け取ったのは本選の直前。
彼女にとっては破りたくなるような内容のメッセージだった。
けれど僕たちと一緒にコンクール本選に行ってくれた彼女は、普段通りにふわりと微笑んでいたんだ。
何も気づかせないように、美しく、そこにいてくれた。
そうして僕たちを支えてくれていた。
何でもないような顔をして。
「……誰と間違えているんですか」
握られた手を強く握り返した僕の声は、自分でも驚くくらい低かった。
「ねぇ、水琴さん」
このポストカードの差出人は、あの教会で幸せに微笑んでいた2人。きっとあの結婚式の数日後に新婚旅行に旅立って、そこから送られてきたのだ。
彼女に何があったのかなんて。
あの幸せそうな2人とはどんな関係かなんて、知らなくてもいいことなのだけれど。
でも……。
ポストカードの消印が8月15日だということと、真ん中に破り損ねたような切れ目を見つけてしまっては、気づかざるを得ない。
8月15日……コンクール本選の約一週間前だ。
エアメールなら一週間ほどで届く。
つまり、これを受け取ったのは本選の直前。
彼女にとっては破りたくなるような内容のメッセージだった。
けれど僕たちと一緒にコンクール本選に行ってくれた彼女は、普段通りにふわりと微笑んでいたんだ。
何も気づかせないように、美しく、そこにいてくれた。
そうして僕たちを支えてくれていた。
何でもないような顔をして。
「……誰と間違えているんですか」
握られた手を強く握り返した僕の声は、自分でも驚くくらい低かった。
「ねぇ、水琴さん」