Raindrop
ばさり、とトートバッグが落ちた。

その音に唇が離される。

至近距離に、僕を見つめる潤んだ瞳があった。

「……好きです」

勘違いなどではないと、本気で貴女を想っているのだと、もう一度はっきりと伝えて、また口付ける。

そうしながら頭の中で警告音が鳴る。

一方的な想いは迷惑なだけだ。

無理やりに押さえつけるのは最低な行為だ。

駄目だ。

これ以上は。

そう思うのに。

「……抵抗、しないんですか」

柔らかな唇を啄み、そう問いかける。


──水琴さんは、抵抗してくれなかった。


それを僕は、どう受け止めたら良かったのだろうか。


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