Raindrop
再びドアがノックされ、タイムリミットが訪れた。
僕はそっと水琴さんを離すと、力の抜けた手を取り、ソファに座らせる。
それから足元に落ちたトートバッグを拾い、水琴さんの隣に置いた。
長い睫を伏せて俯く彼女に謝るべきか、迷いながらも背を向け、ドアへ向かう。
「……好きになっちゃ、駄目」
ぽつりと呟かれた、今にも消えそうに掠れた声。
なのに、大声で叫ばれるよりもずっと強く、耳の奥に残る声だった。
「みこ、」
振り返り、その真意を問いただそうとする前に、勢いよくドアが開いた。
「先生~、お菓子もってきましたぁ」
笑顔の花音、そして拓斗が現れ、部屋の中の雰囲気は一変して明るくなる。
2人を見る水琴さんの顔にも、ふわりと笑みが浮かぶ。
「ありがとう」
薄い色の髪を掻き揚げながら笑う水琴さんはもう、いつもの水琴さんだった。
ただ。
その膝の上に置かれた両手が。
爪が白くなるほど、強く握り締められていた。
僕はそっと水琴さんを離すと、力の抜けた手を取り、ソファに座らせる。
それから足元に落ちたトートバッグを拾い、水琴さんの隣に置いた。
長い睫を伏せて俯く彼女に謝るべきか、迷いながらも背を向け、ドアへ向かう。
「……好きになっちゃ、駄目」
ぽつりと呟かれた、今にも消えそうに掠れた声。
なのに、大声で叫ばれるよりもずっと強く、耳の奥に残る声だった。
「みこ、」
振り返り、その真意を問いただそうとする前に、勢いよくドアが開いた。
「先生~、お菓子もってきましたぁ」
笑顔の花音、そして拓斗が現れ、部屋の中の雰囲気は一変して明るくなる。
2人を見る水琴さんの顔にも、ふわりと笑みが浮かぶ。
「ありがとう」
薄い色の髪を掻き揚げながら笑う水琴さんはもう、いつもの水琴さんだった。
ただ。
その膝の上に置かれた両手が。
爪が白くなるほど、強く握り締められていた。