Raindrop
『拓斗と花音の先生はそのまま続けてもらうつもりだから、みんなに安心するように伝えてね』

「分かった。……それじゃ、また」

通話を切って、その手をだらりと下に垂れる。

力の抜けた体をうつ伏せにベッドに倒し、空ろな瞳で机の上のヴァイオリンケースを眺めた。


──どうにもならない。

もう、僕がどうこう出来る状況にない。

母との会話はそのことを更に思い知らされた。


どちらにせよ、僕の一方的な片思い。

僕が何かをするだなんて、水琴さんは望んでいないのかもしれない。

例え結婚には良い想いを抱いていなくとも。

僕なんかに頼ろうとは思ってない。きっと。



『好きになっちゃ、駄目』



何度も何度も頭の中を駆け巡るその言葉。


──それが望みなら。


それが、望みなのだとしたら。

僕は。


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