Raindrop
長いようで短い一週間だった。
待っていてもそうでなくてもやってくる土曜日のレッスン日。
今日こそは本当に拓斗や花音にいて欲しかったけれど。
先週水琴さんに褒められた花音はよほど嬉しかったらしく、また拓斗を助手にしてお菓子作りに励むようだ。
拓斗と入れ替わりに入ったレッスン室。
息を殺すようにして歩いていくと、ピアノの前で鍵盤に視線を落とす水琴さんの姿が見えた。
「……宜しくお願いします」
平常心を装って、頭を下げる。
「それじゃあ、今日は先週言っていた『エストレリータ』を」
微かに微笑んでいるのが見えるけれど、水琴さんは鍵盤から視線を上げようとはしなかった。
「はい」
僕もそんな彼女を見つめているのは辛い。
軽く息をついて視線を逸らし、ヴァイオリンケースからレディ・ブラントを取り出し、譜面台の前に立つ。