Raindrop
それでも数分で慣れたのか、拓斗も一緒に野菜を切り始めた。

花音はそんな2人の間に立つ。

「せんせー、慌てなくてもいいんだよ~。お兄ちゃんがいつも、ゆっくりでいいよって、言ってるもん」

なんて、アドバイスまでして。

「そ、そう? ありがとう花音ちゃんっ……」

なんて余所見をするから。

包丁で指の皮を切り落としてしまった。

「あああああー!」

声を上げたのは拓斗と花音だ。

じわりと滲んでくる血に青ざめている。

「あ、ごめんなさい、大丈夫、大丈夫だから」

自分の手を切ったことより、拓斗と花音を驚かせてしまったことにオロオロしている水琴さん。

「水琴さん、水で傷口を洗ってください。今絆創膏を持ってきますから」

そう言ってキッチンを出ようとすると、ぬーんと現れた西坂がすちゃっと救急箱を差し出してくれた。

先程までどこにも姿が見えなかったはずなのに。

優秀な執事はまるで忍のようだ。

< 266 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop