Raindrop
次の土曜の午後から、料理教室は4人で行われることになった。
水琴さんは、実は料理が下手なのだと、拓斗と花音には事前に説明をしておいたのだけれども。
ビーフシチューを作るのに野菜を刻み始めた水琴さんの様子を見た2人は、唖然としていた。
じゃがいもを剥いた皮が分厚い。……というか、実がほとんど、ない。
人参も然り。
ピーラーを使っているのに、どうして実が無くなるのだろう。本当に水琴さんは不思議だ。
そして、たまねぎを切るときはボロボロ大泣き。
「い、いたっ、たまねぎ、ばかっ、どうしてこんなに沁みるのかしらっ」
ぐずぐずと泣きながらそう言う水琴さんに、僕は笑ってしまったのだけれども。
拓斗と花音はぽかーんと口を開けていた。
大人で清楚で何でも出来そうなお姉さんがたまねぎに苦戦している姿は、大人に夢を抱いている子どもには受け入れづらい事実なのかもしれない。
彼らの中でのイメージはボロボロと崩れていることだろう。……僕ほど衝撃は受けていないだろうけれど。