Raindrop
「いいわ。6月の最後のレッスンのときなら……」

「ほんとうっ?」

花音の顔がぱあっと明るくなった。

「ええ。私のために考えてくれて、ありがとう」

水琴さんは手を伸ばし、隣に座る花音の頭を撫でる。それに花音は嬉しそうに笑った。

「……いいんですか?」

拓斗は申し訳なさそうな顔をしている。

「ええ、大丈夫。拓斗くんもいつも心配してくれてありがとう」

微笑む水琴さんに、拓斗は少しだけ唇を噛みながら俯いた。

それからチラリと僕を見る。

──ああ、そうか。

拓斗は勘違いをしたままだった。……今では勘違いではなくなったのだけれど。

心配そうに僕を見る拓斗に、大丈夫だよ、と微笑んでみせる。

それから花音に視線をやり。

「それじゃあ、たくさんご馳走を用意しないとね、花音」

「うんっ」

花音と微笑みあった。

そこから更に視線を動かして水琴さんと目を合わせると、彼女は小さく囁いた。

「ありがとう」

──と。




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