おじいさんと孫(仮題)
 「は、何を言って」
   
漸く彼の口から紡がれた言葉は取り繕うような笑みを湛えていた。それを遮るように、俺は懐から手帳を取り出してみせた。
そこに挟まった一枚の古い写真。擦り切れ、ボロボロになりつつあるそれはそれなりの年月が経っており、何度も取り出して眺めたのだろうという事が分かる。
   
 「あなたの事を聞かされたのはほんの一年前の事です」
 
 「最初はそんな非現実的な事、到底信じられませんでしたが、今日初めてあなたにお会いしてそれが真実だったと確信しました」
   
 
 「本当に年取らないんですね」
 
   
 無表情ながらにも少女の手をしっかり握る、今となに一つ変わらない男の姿。  少女ははにかむように笑い、男の手にしがみつくようにして並んでいた。
こうして見ると、親子と言うよりも兄弟のように思えた。
 
 
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