些細なことですが
「最近どう?」
「あー…文化祭終わった」
「おつかれーそれ、行きたかったんだよね」
へらへらしてるけど、おなじ市内なら来れるじゃん
口に出そうになるのを我慢した。
「夏目はどうなんだよ?
つかこの路線学校行くけどお前いつもこれに乗ってんの?」
「んー良くもなく悪くなく?
たまーにね。宛もなくバスに乗るのも素敵じゃない?」
「…はっ暇人かよ」
「暇人様だよー
人生を謳歌してるの」
「謳歌すんなら青春しろよ」
「…………」
絡みが少なかった割りには会話は続くし訳ありな奴にこんな内容はきわどいかもしれない。
へらへらと笑ってなにかをごまかす夏目が白く揺らいで見えた。
“ツギハ ××コウコウマエ
ツギハ ××コウコウマエ…
オオリノカタハ…”
アナウンスが言い終わる前に夏目は降車ボタンを押す。
「学校がんばってね、
お 寝 坊 さ ん 」
「………」
バスが停まると、馬鹿にされた
「じゃーな、
ひ ま じ ん 」
言い返したけどやはり笑うだけ。
「これあげる」
とっさになにか手をつき出されて受けとると軽く手をあげてバスを降りる。
外は太陽がギラギラとアスファルトを照らして蝉の鳴き声が頭に響く
握った手のひらがじんわりと汗をかきはじめた。
手のひらをみるとそれは紅い飴玉だった。
透明な袋に入ったそれはやけに色が鮮やかで
冷房のきいた車内での出来事が嘘のようだった。