チョコレートトラップ
一見、何事もなかったように

見える校舎内。


でも、みんなの私を見る目が

変わったような気がして

落ち着かない。


教室へ向かう足取りも

自然と重くなっていく。


やっとの思いで着いた自分の教室。


私が入った瞬間、

それまでの和やかな雰囲気が

変化した。


「なによ、みんな。

 あれはウソタの一方的な

 モノなのに……」


みんなの視線に

静かに抵抗するように、

小さな声で呟いてみる。


私が声を張り上げたところで、

きっと事態は変わらないと思うし。


それよりも、

もっとややこしいことになって

収集がつかなくなりそう。


だから、納得は出来ないけれど、

しばらくの間

このままでいた方が

いいのかもしれない。


みんなの噂話が収まるまでは。


ただ……。








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