チョコレートトラップ
私のスキな高橋くんには

誤解されたくはない。


高橋くんにだけには、

この噂話が耳に入らないことを

強く願う。


『私のスキな人は、高橋くん。

 あなただけなんだから』


自分の席へ着くと

カバンを横にかけて

机に突っ伏した。


とりあえずはこのまま、

誰とも話さないでいよう。


周りの声が聞こえないわけじゃないし、

どっちかというと気になっちゃう。


でも、それに

私が反応してしまったら最後。


“ウソタとの熱愛”

を私が認めてしまうことに

なりかねないから。


「ウソタ、今回は

 嘘じゃないみたいだねー」


「磯貝とウソタがねー。

 意外なカップルだよなー」


教室のあちこちから聞こえる

みんなの噂話。


『違うんだってばー!』


後藤先生が来る時まで、

私は立ち上がって

叫びたい気持ちを抑えるのに

必死だった。





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