チョコレートトラップ
「あ、いた。芹菜!」


必死で階段を上る背後から

明るく大きな声が飛んできて、

私は足を止めて

素早く振り返った。


「凛!」


今、私が

一番一緒にいたいと思う相手が

階段を駆け上がると、

周囲の視線から守るように

素早く背中から

私を抱きかかえる。


「取り合えず、

 このまま屋上に行くよ。

 話はそれから」


凛が私にそっと耳打ちすると、

私の返事を聞くことなく

そのままの体勢で階段を上り始めた。





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