チョコレートトラップ
私の肩を抱きかかえたまま

凛が屋上へのドアを開ける。


やっぱりここには

人影など全くない。


2月に入ったとはいえ、

まだまだ外は寒い。


風が吹く寒い場所なんて

みんなお昼休みの場所になんて

選ぶはずないんだ。


それが、今の私にとって

好都合なんだけれど。


出入口に近い、

陽に当たるブルーのベンチに座って、

持ってきていたお弁当を

膝の上に広げ始める。


「で、どういうことなの?」


手を合わせて

「いただきます」と呟き

食べ始めた凛が、

私に視線だけを合わせて

単刀直入に切り出す。


私もまた手を合わせてから

卵焼きを掴みながらはなし始めた。






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