クランベールに行ってきます


 青年は片手で結衣を掴んだまま、小鳥を追い払おうと手を振る。しかし、小鳥はそれを避けて、頭の後ろに回り込んだりしながら、青年の邪魔を繰り返した。
 今にもはたき落とされそうな気がして、結衣は小鳥に命令した。

「ロイド、ローザンを呼んできて」

 しかし、小鳥は返事をするだけで、青年の邪魔を止めようとしない。

「いいから、ロイド! お願い、ローザンを呼んできて!」

 結衣がいくら叫んでも、小鳥は返事をするだけで、命令を聞かない。そして、とうとう青年の腕が命中し、小鳥は地面に叩きつけられた。

「ロイド!」

 結衣が小鳥に駆け寄ろうとするのを、青年が引き止めた。

「おっと、邪魔者はいなくなったんだ。さっさと行こうぜ」

 おどけたように笑う青年を結衣は睨みつける。

「なんて事するのよ!」

 怒鳴った後、ふと青年の後ろに目を向けると、さっき出てきた通路の出口に、学者のロイドが立っていた。

「ロイド!」

 結衣が思わず名を呼ぶと、青年は小鳥のロイドと勘違いし、苛々したように怒鳴った。

「いつまでも、うるせぇぞ」

 ロイドは指を一本立てて、口に当ててみせる。結衣は小さく頷いた。続いて両手で耳を覆ってみせた。耳を塞げという事だろうか。
 結衣は青年から手を離すと、両手の人差し指を両耳にそれぞれ突っ込んだ。
 突然の結衣の奇行を、青年は訝しげにまじまじと見つめる。

「何の真似だ?」

 その隙に、こっそり青年の後ろまで来ていたロイドが、いきなり青年の耳元で囁いた。

「わ」

 見た目は囁いたように見えたが、あまりの大きな声に、青年は文字通り飛び上がって振り向いた。


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