クランベールに行ってきます


 ロイドは慌てて駆け寄ると、結衣を抱き止めた。
 ロイドの顔を見た途端安心したのか、今頃になって攫われそうになった恐怖が、全身を震わせる。

「ケガでもしたのか?」

 優しい問いかけに、勝手に涙が溢れ出す。
 結衣はロイドの胸に顔をすりつけて、しがみつくと、掠れた声でつぶやいた。

「……怖かった……」

 ロイドは結衣の震える身体を、しっかり抱きしめると、項垂れて詫びた。

「悪かった。側にいろと言っておきながら、オレの方が側を離れた」

 結衣は首を横に振る。

「あなたは悪くない。勝手に研究室を出た私が悪いの。ローザンも引き止めてくれたのに。ごめんなさい。もう勝手な事しないから」

 そう言って、さらにしがみつく結衣の頭を優しく撫でながら、ロイドはクスリと笑った。

「素直にいう事を聞くおまえなんて、薄気味悪いぞ」
「ひどい」

 結衣の不服そうな声に、ロイドは益々おもしろそうにクスクス笑う。
 ロイドはそのまま、結衣の涙と震えが収まるまで、優しく頭を撫で続けた。

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