クランベールに行ってきます
”投獄”も気になる。もしも王の期待に応えられなかったら、投獄されるって事だろうか。
異世界の検索で王子が見つからなかったとしても、今と変わらない。むしろロイドを投獄してしまっては、今後の捜索作業には大きな痛手となるはずだ。心に余裕をなくしていたから、そう思っただけだろうか。
結局、納得できる投獄の理由を思い付かないので、結衣は別の事を考えた。
もしも王子の不在がこのまま続いたら?
「このまま何年も王子様が見つからなかったら、私、ジレットと結婚しなきゃならないのかな」
結衣が何気なく疑問を口にすると、ロイドは穏やかな表情を湛え、抑揚のない声で言う。
「そうなるだろうな」
結衣は思わず笑顔を引きつらせた。
「だって女同士よ? できるわけないのに、今度は世継ぎが生まれないって問題になるんじゃないの?」
ロイドは表情を変えることなく、機械的に言う。
「子供なんかどうとでもなる。禁忌のクローン技術を使えばな。殿下の体細胞と遺伝子情報は科学技術局に保管されている。偽者が現れたりした時の科学捜査のためだ。局長のオレが許可すれば利用は可能だ」
結衣は眉をひそめてロイドを見つめたまま、一瞬絶句する。感情を殺したロイドに違和感を覚えながら、立ち上がって叫んだ。
「そんなのジレットがかわいそう! ジレットは王子様が好きなのに!」
ロイドは相変わらず穏やかな表情で結衣を見上げ、静かに問いかけた。
「他人の事より自分はどうなんだ? この先、もしかしたら一生、耐えられるのか?」
考えてなかった。この先一生、クランベールで王子の身代わりをするなど。
呆然と立ち尽くす結衣を見つめて、ロイドの表情が少し動いた。淡い笑みを浮かべると再び問いかける。
「オレと一緒に逃げるか?」
「え?」
「何もかも放り出して、何もかも失ったオレと一緒に」
時が止まったかのように、二人で見つめ合ったまま微動だにせず沈黙が続いた。