クランベールに行ってきます


 黙ってロイドを見つめる結衣の頬を涙が伝う。ロイドは少し驚いたように尋ねた。

「どうした?」
「なんでもない」

 結衣が小さな声でやっと答えると、ロイドはフッと笑って立ち上がり、結衣の頭をかかえるようにして抱き寄せた。

「また、なんでもないのに泣いてるのか」

 ロイドは結衣の頭を撫でながら、優しく諭すように言う。

「心配するな。おまえは必ず守ってやる。前にも言っただろう?」

 ロイドの優しさに涙が止まらなくなり、結衣は彼の胸に顔を伏せてしがみついた。

「優しくしないでよ」
「わかった。激しい方がいいんだな?」
「バカ。エロ学者」

 耳元でロイドがおもしろそうにクスクス笑う。

「私、あなたに何もしてあげられない」
「おまえにはエネルギーを貰った。オレはきっと成し遂げられる。おまえの胸は確かに小さいが、すごく温かかった」
「小さくて悪かったわね。他に言う事ないの?」

 ロイドの抱きしめる腕に力が加わった。

「あ…………もう少し太れ」

 一際強く抱きしめた後、ロイドは身体を離した。

「オレは、もうしばらくここで設計をする。部屋に戻るなら送っていこう」

 結衣は涙を拭いて、ロイドを見上げた。

「ここにいる。邪魔しないから。一緒にいたい」

 ロイドは目を細めて頷いた。

「わかった。好きにしろ」


 その日の夜、結衣は時々テラスに出てみたが、ロイドの部屋の灯りは遅くまで消えたままだった。

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