クランベールに行ってきます


 やがて光が収束し、結衣はロイドに視線を向けた。ロイドは少し肩をすくめて、天を指差した。

「大陸全土を見渡せる上空から見たら、壮観だろうな。全遺跡が一斉に光る様は」

 黙って見つめていると、おどけたようなロイドの笑顔が、次第に真顔に変わっていった。
 そして、ロイドはいきなり結衣を抱きしめた。

「何?」

 驚いて結衣が尋ねると、ロイドはさらにきつく抱きしめて絞り出すように言う。

「少し、黙ってろ」

 言われるままに黙って、しばらくじっとしていると、ロイドの腕が少し緩んだ。

「おまえを抱いていると、気持ちが落ち着く」

 耳元でつぶやくロイドの声に謎が解けた気がして、結衣は思わずクスリと笑った。

(だから、ロイドはドキドキしないんだ)

 結衣はロイドの背中に腕を回して、抱きしめ返した。

「つらいの?」

 結衣の問いかけに、ロイドは腕をほどき、両肩に手を置いて、結衣の身体をゆっくりと突き放した。

「……大丈夫だ」

 ロイドは俯いて少し笑顔を作ってみせると、結衣の頭をひと撫でし、背を向ける。

「もう少し高速化のロジックを考えてみる。おまえはもう寝ろ」

 そう言って自室に向かい歩き始めた。
 遠ざかっていくロイドの背中が、どこか儚げで、結衣は思わず名を呼んで駆け寄った。

「ロイド!」

 振り向いたロイドの胸に飛び込んで、結衣はしがみついた。

「一緒に連れて逃げて。王子様が見つからなかったら。私、あなたについて行く」

 ロイドはそっと結衣を抱きしめ、静かに答えた。

「あぁ。だがそれは最後の手段だ。最後まで最善を尽くそう」
「うん」


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