クランベールに行ってきます


 結衣が笑って頷くと、ロイドは一変してイタズラっぽい笑みを浮かべ問いかけた。

「じゃあ、殿下が見つかった時は、どんなご褒美を貰えるんだ?」
「え? それは王様から出るんじゃないの?」

 思いも寄らない質問に、結衣が戸惑いながら答えると、ロイドは不服そうに見つめる。

「おまえからは何もないのか? オレについて来るって事は、人生をオレに預けるって事だろう? 見つからなかった方がご褒美を貰えるってのは、おかしくないか?」
「そう言われても……」

 結衣が苦笑して言い淀んでいると、ロイドは何かを思い付いたらしく、大きく頷いた。

「よし。見つかった時は、おまえを頂くとしよう」
「い、頂くって何?」

 思い切りうろたえて、結衣が腕の中から逃れようとすると、ロイドは身体を引き寄せ耳元で囁いた。

「子供じゃないんだ。わかるだろう?」
「えーと、そう言う意味じゃ、私、子供だから」

 声を上ずらせて、乾いた笑いを漏らす結衣を、ロイドは少し目を見開いて見つめた。

「そうなのか? そういえば、キスも初めてだって言ってたな」
「……え……」

 どうやらウソだとウソをついた事が、ばれていたらしい。
 ロイドは改めて結衣を抱きしめると、楽しそうに笑った。

「まあいい。それはそれで楽しみだ」
「え? 男の人って、初物は引くんじゃないの?」

 結衣が意外そうに見上げると、ロイドはニヤリと笑った。

「オレは気にしない。初物には初物の良さがある。オレ好みにカスタマイズ自在って事だからな」
「機械のように言わないで」

 結衣は思いきり脱力して、大きくため息をついた。


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