クランベールに行ってきます


 結衣は頭を抱えてうなった。

「うーん。頭がごちゃごちゃしてきた」

 紙に書いて整理しようと思い、部屋の中を見回したが、ハタと気づいて、ため息をついた。この部屋の物は勝手に触ってはいけない事になっている。
 先ほどの事でお互い気まずいが、ここはロイドに頼むしかなさそうだ。結衣は立ち上がり、部屋を出ると研究室に向かった。

 研究室の扉を開けると、ロイドとローザンが揃って振り向き、驚いたような表情をした。驚いている理由はそれぞれ違うのだろうが。
 ローザンが心配そうに声をかけた。

「ユイさん、寝てなくて大丈夫なんですか?」
「うん。もう平気。大したことないから」

 結衣は苦笑して答える。元々仮病だ。
 結衣は休憩コーナーの側まで行くと、物言いたげに見つめるロイドに頼んだ。

「ロイド、紙とペン貸して」

 ロイドはプリンタから用紙を数枚抜き取り、机の上のペンを持って結衣の側までやって来た。それを手渡しながら、無表情のまま尋ねる。

「文字の勉強でもするのか?」
「ありがとう」

 受け取った紙とペンを机の上に置き椅子に座ると、結衣はロイドを見上げて言う。

「色々考えてみようと思って。王宮内の怪現象や、王子様の失踪の事や、遺跡の事とか」

 途端にロイドは不愉快そうに顔をしかめた。

「余計な事はするなと言っただろう」
「何もしないわ。考えるだけ。気になる事や知りたい事は、自分で動かず、あなたに訊くから。それならいいでしょ?」

 ロイドは今ひとつ不満げな顔をしながらも、渋々承諾する。

「まぁ、それならいいが……。本当に考えるだけにしとけよ」
「うん」


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