クランベールに行ってきます


 少し天井の低い横穴を、背の高い二人は身を屈めてゆっくり進む。やがて突き当たりにたどり着き、ロイドがライトで下を照らした。
 壁の下には、更に地下へと続く狭い石段が、暗闇の中に消えていた。

「明らかに人工物だ。おまえの仮説が、いよいよ信憑性を帯びてきたな」

 そう言って振り返ったロイドは、宝物を見つけた少年のように目を輝かせていた。自分もわくわくしてきたが、それ以上にロイドの方が冒険に胸を躍らせているようで、結衣はなんだか楽しくなってきた。

 古い石段はいつ崩落するとも限らない。ロイドは一段ごとに足元を確認しながら慎重に下りていく。
 少し下りたところで石段は終わり、通路は右に折れ曲がっていた。そのまま真っ直ぐ進むと、突き当たりから更に下へ石段が続いていた。
 結衣がロイドの後ろから覗き込むと、石段の終わりが見えていた。床が青白い光に照らされている。

「灯りが点いてる。誰かいるの?」

 結衣が尋ねると、ロイドは石段を下りながら答えた。

「いや、おそらく遺跡だ。遺跡の装置は常に青白く光っている」
「本当? じゃあ、この下に……!」

 ロイドは立ち止まり振り返ると、興奮した結衣の頭をひと撫でした。

「自分の目で確かめろ。行くぞ」

 はやる気持ちを抑えつつ、ロイドの後について、ゆっくりと慎重に石段を進む。そして石段の終わりにたどり着いた。
 下りてきた石段の通路から一歩踏み出すと、そこには青白い光に包まれた、広大な空間が広がっていた。
 結衣は息を飲んで、周りを見渡す。

 天井の高さは二メートルくらいだろうか。ロイドの頭より少し高いくらいだ。広大な空間には不思議な模様の刻まれた直径一メートルくらいの太い円柱が林立し天井を支えている他は、見渡す限り何もない。結衣はまるで海の底の古代神殿にでもいるような、不思議な感覚を覚えた。


< 154 / 199 >

この作品をシェア

pagetop