クランベールに行ってきます


 柱の他に唯一あるのは、先ほど下りてきた通路の左側に当たる場所に、青白い光を放つ謎の機械装置だけだ。モーターの回るような、低く静かにうなる音が周りに満ちている。
 謎の機械装置は五十センチほどの高さの、直径二メートルはある大きな円盤状の台座の中心に、広間にあるのと同じくらいの太さの円柱が立っている。

 台座の上には中央の円柱を囲むように、間隔がまちまちな年輪を思わせる同心円の溝が刻まれ、不規則に青白い光が明滅していた。
 中央の柱には迷路のような模様が刻まれ、その迷路をたどるように青白い光が素早く行き来している。
 装置から二メートルくらい間隔を置いて、装置を取り囲むように壁が丸く抉られている。その壁の一部にボタンやレバーの並ぶ操作パネルのような物があった。ロイドは早速そこへ歩み寄る。

「これが遺跡の装置なの?」

 結衣は円柱を眺めながら、ゆっくりとロイドの側まで歩いた。
 ロイドは操作パネルの上や、周りに刻まれた模様を、触らないように指先でなぞりながら、こちらに見向きもしないまま「ああ」と短く答えた。

 よく見ると、壁には一面不思議な模様が刻まれている。文字のようにも見えるが、結衣の知っているクランベールの文字とは違うようだ。
 壁に刻まれた模様を興味深く眺めていると、突然ロイドがこちらを向いて結衣を抱きしめた。
 結衣が驚いて小さな悲鳴を上げたが、ロイドはかまわず興奮したように言う。

「すごいぞ、ユイ! おまえの言った通りだ。この遺跡は、おそらくメイン制御装置だ」
「他の遺跡とは違うの?」
「あぁ。第一、天井が抜けてない」

 ロイドは結衣から離れて、円柱の上の天井を指差した。


< 155 / 199 >

この作品をシェア

pagetop