クランベールに行ってきます


 地下の探検からすでに十日が経っていた。依然として王子は見つかっていない。
 王宮地下の遺跡には、予想通り別の出入口が存在した。遺跡の奥にあるその出入口は、霊廟にある棺の中に通じていた。
 ロイドが王に報告し尋ねたところ、王は遺跡の事も霊廟の抜け道も、先代から聞かされてはいなかったらしい。先代も知っていたかどうか不明だ。

 ローザンが足止めし、ロイドの連絡を受けたブラーヌが、翌日から地下遺跡の調査にやってきた。
 あと少し連絡が遅れていれば、ブラーヌは旅に出てしまうところだったというので、奥を調べる前にローザンに連絡して正解だったと言える。

 ブラーヌは調査にやってきてから、ずっと地下遺跡内にいる。王が客室を用意してくれたが、いつでも好きなように調査がしたいという理由で、寝袋を持ち込んで遺跡内に寝泊まりしている。
 言い聞かせておいても時間を忘れて没頭するので、食事と同期の時には、ロイドが連れ出しに行っていた。
 調査中のブラーヌは、他の事には上の空なので、結衣も正体を明かさず王子として接している。

 結衣はブラーヌと、ほとんど話した事はないが、彼は外見から変わり者の匂いを漂わせていた。
 白髪交じりの赤茶色の髪はいつもボサボサで、顔には無精ひげを生やしている。ロイドと同じくらい長身だが、ロイドよりかなり痩せていた。
 いつも着古したヨレヨレのシャツと作業着のようなズボンの上に、作業着のような上着を羽織り、年季の入ったトレッキングシューズを履いている。他の服を着ているのを見た事がない。

 同期時に研究室に連れてこられ、所在なげにボーッと立ち尽くしている姿は、枯れ木が立っているようだ。
 明るい茶色の瞳は、いつもトロンと眠そうで、どこを見ているんだか、ぼんやりしている。ところが遺跡の事を語り始めると、見違えるほど輝き始める。そんなところは、ロイドとよく似ていると結衣は思った。

 ブラーヌの調査の結果、地下遺跡の装置は、やはり全遺跡のメイン制御装置である事が判明した。
 これでいつでも活動期を引き起こす事ができると思ったら、そんなに都合よくは行かないようだ。


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