クランベールに行ってきます


 機械には疎いブラーヌが、ロイドと協力して装置を調べた結果、操作パネルには様々な機能が集約されている事がわかった。
 全遺跡同時作動スイッチと各遺跡の個別作動停止スイッチに三十年と三十日を数えるカウンタ、そして各遺跡ごとのエネルギー残量を示す計器が備えられていた。
 何が稼働エネルギーになっているのかは、もう少し詳しく調べてみなければ分からない。だが、計器の示す残量はあとわずかとなっている。

 ロイドが計測したところ、同期後に急激に残量が減る事が分かった。彼の見解では、遺跡は三十年かけて何らかのエネルギーを蓄積し、活動期にそれを放出している。今回、三年早まったせいで、三十日間丸々活動できるか怪しいらしい。

 三十年という期間は、百パーセントのエネルギーを溜めるには余裕を持たせているはずだが、二十七年で百パーセントかどうかは微妙だという。
 機械とはそういうものらしい。必要な性能より、限界値は多めに作られているのだ。
 制限速度が百キロと法律で定められていても、百キロ位下のスピードしか出ない車はないのと同じ事のようだ。

 残量と同期時に使用されるエネルギー量を元にロイドが計算した結果、活動期は一日短くなる可能性があるという。
 ということは、同期が起こる回数は残り三回。最後の一回は結衣が日本に帰るために使われるので、異世界を検索できるのは、あと二回だ。

 人捜しマシンは全世界の検索にかかる時間が、一秒を切るまでに処理の高速化が成功していた。同期の十秒間は、ほとんど異世界の検索に使われている。
 終了サインは出るようになったが、王子を見つける事はできていない。
 ロイドは検索条件を変更しながら、検索を繰り返していた。


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