クランベールに行ってきます
「じゃあ、もしかして毎回、私がヒットしてるの?」
「いや。検索はしているが、王宮内の検索結果は無視するようにプログラムしてある」
「どうして? それじゃ検索していないのと同じじゃない」
ロイドは渋い表情をする。
「転送機能オンにしたら、ヒットするたびに転送確認が入って、検索が中断されるんだ。毎回おまえがヒットして中断してたら、十秒以内に終わらない。そのためだ。だが確かに盲点ではあるな。転送なしで検索だけ、してみる価値はある」
「今から?」
結衣が嬉々として尋ねると、ロイドは首を振った。
「今は無理だ。それを試すには内蔵プログラムの変更と、基盤への焼き付けが必要になる。大した変更じゃないが、もしもバグってデグレードしたら、今夜の異世界検索に支障がある。明日の朝、試してみよう」
「うん……」
結衣は俯いて自分のカップを手に取った。
思い切りガッカリしたのが顔に出ていたようで、ロイドがクスリと笑って身を乗り出すと、結衣の頭を撫でた。
「おまえは、やっぱりおもしろい。かなりニブイ奴だと思っていたが、案外鋭いな」
「それって褒めてるの? けなしてるの?」
結衣が口をとがらせると、ロイドはクスクス笑いながら立ち上がった。
「もちろん、褒めてる」
そしてカップを持って流しへ向かう途中、結衣の横で立ち止まり、独り言のようにつぶいた。
「明日の朝、殿下が見つかったら、夜が楽しみだな」
「……え……」
ドキリとして結衣が見上げると、ロイドは意味ありげな笑みを浮かべ、横目で結衣を見下ろしていた。そして更に独り言のように言う。
「あぁ、今夜見つかるかもしれないな。どっちにしろ楽しみだ」
結衣が絶句して引きつり笑いを浮かべると、ロイドはおもしろそうに笑いながらその場を立ち去った。