クランベールに行ってきます
「何がおかしい」
ロイドが振り向くと、ローザンはなおも笑いを堪えながら、ロイドに言う。
「だって、ロイドさん分かりやすすぎ……」
そう言って、クスクス笑うローザンに、ロイドと結衣は同時にツッコミを入れる。
「何がだ」
「何が?」
ロイドはともかく、結衣にまで突っ込まれたのが意外だったのか、ローザンは笑うのを止めて、目を丸くしたまま結衣に問いかけた。
「え? 分かってないんですか?」
「だから、何が?」
キョトンと首を傾げる結衣に、ローザンは大きくため息をついた。
「いえ……ぼくの口出しすることじゃありませんから」
そう言って、椅子を反転させると、コンピュータの画面に向き直った。
ローザンのいう事は意味深で気になるが、とりあえずは三十秒の方が問題だ。実際にはどのくらいの長さなんだか、見当もつかない。
結衣は机にひじをついて身を乗り出すと、ロイドを手招いた。ロイドが同じようにひじをついて顔を近づけると、結衣は小声で問いかけた。
「最初のキスって何秒くらいだった?」
「三秒くらいじゃないか? おまえが途中で突き飛ばしたから」
「じ、じゃあ、この間のは?」
「五秒ってところだろう」
ロイドの答えを元に、結衣は三十秒の長さを計算する。最初の十倍でこの間の六倍。その計算結果に、結衣は頭をかかえて叫んだ。
「無理! そんな長い時間、窒息しちゃう!」
結衣の言葉にロイドは呆れたように、言い返した。
「するわけないだろう。もしかして息を止めてたのか? 人間には鼻という呼吸器官もあるんだぞ」
「だって、鼻息かかったら恥ずかしいじゃない」
「悪かったな。鼻息かけまくりで」
「お二人はすでに、そういう間柄なんですか?」
二人がコソコソ言い合っていると、いつの間にか側に来ていたローザンが、興味深そうに覗き込んでいた。
「どういう間柄だ」