クランベールに行ってきます


 ロイドが額を叩くと、ローザンは意外そうに目を見開いた。

「え? だって、キスしたんですよね?」
「こいつがしたいと言うからしたのに、殴られそうになったんだぞ」

 憮然として訴えるロイドに、結衣は真っ赤になって憤慨する。

「言ってないわよ! ひとの言葉を曲解して、あなたが強引にしたんじゃないの! っていうか、そんな事ベラベラしゃべらないでよ!」

 言い争う二人に、ローザンは苦笑すると、

「はいはい、仲がよろしい事で」

と、ため息混じりに言いながら、元の場所に戻った。

「どこが仲良く見えるっていうんだ」

 怪訝な表情でローザンの背中を見送った後、ロイドは結衣に向き直った。

「で? 条件を飲むのか?」
「いいわよ。勝てば問題ないし」

 笑顔を引きつらせながら承諾すると、結衣はルールを説明し、ロイド先攻でゲームを開始した。

 数十分後、あっさり勝敗は決した。
 一面ほとんど真っ白に染まったゲーム盤を前に、結衣はニコニコとロイドを見つめた。ロイドは同じゲーム盤を忌々しげに見つめて、眉間にしわを寄せる。

「で? 何を食えって?」

 ロイドが不愉快そうに尋ねると、結衣は笑顔のまま告げた。

「三時のお茶と一緒に食べてもらうわ。お昼ご飯は控えめにね。私はこれから三時まで厨房にいるけど、いいでしょ?」
「かまわないが、おまえが作るのか?」

 もの言いたげに見つめるロイドに、結衣は詰め寄る。

「何よ。言っとくけど、これに関してはプロ並みだって友達に言われてるんだから」
「身内の証言は当てにならない」

 平然と否定するロイドを指差して、結衣は宣告した。

「言ったわね! もうイヤだって泣いて頼んでも、完食してもらうから!」

 捨て台詞を残して、結衣はロイドの研究室を出ると、厨房に向かった。

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