クランベールに行ってきます
ユイさんは感情が顔に出る人なので、ロイドさんを好きなのはすぐに分かった。
ぼくの目には仲の良い恋人同士に見えるのに、二人はキスまで交わしておきながら、互いを恋人とは認識していないらしい。
顔に出るユイさんと態度に表れるロイドさん、こんなに分かりやすい二人なのに。
ロイドさんがユイさんの気持ちに気付いているのかどうかは分からないけれど、ユイさんはとにかくニブイので、さっぱり気付いていないようだ。
楽しい(?)休憩時間が終わり、ぼくらはそれぞれ自分の使った食器を持って、給湯コーナーの流しに向かった。
運ぶだけ運ぶと、いつもユイさんがヒマだからという理由で、後片付けはしてくれる。
今日もぼくとロイドさんは食器を運んで、ユイさんに礼を言うと、仕事に戻ろうとしていた。
すると、後ろで小さな声がした。
「いたっ……!」
「どうかしましたか?」
ぼくは振り向くと、ユイさんの側へ様子を見に行った。
洗剤にまみれた手の指先で泡が赤く染まっている。
「お皿の底が欠けてたみたい」
「とりあえず泡を洗い流してください」
ぼくの指示通りに、泡を洗い流した彼女の手を取り、間近で傷口を確かめる。指先が、ほんの少し切れて血が滲んでいた。
「少し切れてますね。絆創膏を貼っておきましょう。洗い物は、ぼくが替わりますよ」
「え、いいよ。大したことないし」
白衣のポケットに絆創膏が入っていたはず、と思い探ろうとしたら、頭の上に影が差した。