月と夕焼け
「純、本気でニヤけるの止めろよ。キショイ」

「久しぶりに会ってキショイはないだろ」

「良いから。着くぞ」

「…あぁ」


目の前には、見るからにデカくて金持ちだと分かる西城家。

ここは本邸で、俺と美乃梨は西城が勉強部屋として使うマンションに行きなれていた。


「ここ久しぶりだ」

「あぁ、あのマンション解約したからな。今、俺はここしか帰れる所がないんだよ」

「なんで?」

「…優のため」

「優人?あいつ別荘買ってもらってただろ?」

「優がここに帰って来やすいためだよ」


お兄ちゃんな西城。
昔から変わらない。

誰よりも「家族」というのを大切にしている気がする。


「今はそんな話しはどうでも良いだろ。美乃梨に会う決心ついてんのか?」

「ついてない。顔見るだけで抱き締めるかも」

「それはそれでなるようになるさ」

「そうだな」


俺が笑って答えると、西城は家の扉をあける。


中には、一人のメイドが立っていた。
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