月と夕焼け

「私の一番の願いは、遥佳くんの幸せなの」

「…幸せ?」

「誰とでも良い。なんでも良いの。遥佳くんが誰よりも幸せになって欲しい」

「…だから、美乃梨さんと結婚するんじゃないんですか?」


もっともな疑問だと思う。
遥佳くんのことが好きな子に言うことじゃないかもしれないけれど。


「私たちが結婚するのは会社の為。知ってるでしょ?」

「…はい」

「私はね、遥佳くんが恋をして一生守りたいと思える女の子が現れるのを待ってるの」


私が笑いながらそういうと、佳奈ちゃんは訳の分らないといった顔をしている。



分らないか…。

私の遥佳くんに対する特別な思い。


恋愛感情よりも遥かに大きな「好き」という気持ち。
だけどこれは「恋愛」ではなく、ただの「愛」だ。


「遥佳くんはね、ちゃんと幸せにならないといけない人だから」

「それなら、美乃梨さんもじゃないんですか?それに、私は…」

「好きな気持ちに嘘つくとね。嘘つくことしか出来なくなるから言ったらダメだよ」


佳奈ちゃんは呆気に取られた顔をしている。
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